読体術(仙頭正四郎)に学ぶ 「自然と生きる、自然に生きる意味」

書籍からやさしさを育む力について考える、架空の書店「あかり書房」です。


今回は1998年12月に発売された 

「読体術」自分でできる東洋医学の健康診断(仙頭正四郎)
を題材に、
「自然と生きる、自然に生きる意味」
について、みなさんとともに考えていきたいと思います。


今回のブログをお読みいただいた後のゴールは、読んでいただいたみなさんに
・「今より健康な状態を楽しめるようになる」
ことと、
・「自然とともに生きる安心感を得られる」
ことです。

そのためのエッセンスは以下の3点。

1.一日のリズムに従って生きる。
2.四季を身体で感じる生活を送る。
3.身体を冷やさない

順々にお伝えしていきますが、まずこの本を手に取った経緯と私の体験をお伝えします。

東洋医学に出会い、生き方まで変わってしまった、私の体験】

私は現在40代半ばの男性です。
おかげさまで、あまり身体の衰えを感じていません。
いや、むしろ、20代の頃より今のほうが、ずっと元気に毎日を過ごせています。

その大きな要因のひとつが、東洋医学を知り、それを実践するようになったことです。


私は20代後半に、手指の爪の付け根に細菌が入ることでできる皮膚病にかかってしまいました。
最初は簡単に治ると思い、近くの皮膚科に通いました。
そこでは西洋医学に則り、皮膚病が起こっている箇所を窒素で冷却する処置をとってもらいました。
とても痛くて、その日一日手を洗うのも嫌になるくらいです。

治療直後は皮膚病の箇所が壊死して一度治ったかのようにみえるのですが、また時間をおくと再発してしまいます。
そこでまた冷却するのですが、一旦治る→再発する、の繰り返しです。
それが2ヶ月くらい続き、ほとほと嫌になってしまいました。


そこで、藁にもすがる思いで、東洋医学を実践する「仙頭クリニック」(当時都内、現在京都府にある)を訪ねました。
そして通院し、2ヶ月くらいで完治することになるのです。

仙頭クリニックの院長、仙頭正四郎医師(すなわちこの本の著者)に診てもらったのですが、ほとんど患部を診ませんでした。
診られたのは、脈の回数と強さの触診、舌の状態、日々の生活のヒアリングです。

そこで仙頭先生が私に伝えたのは、
「君の体質から、この生活リズムを続ける限り、この病気は絶対治らない。」
ということでした。


私の体質は胃腸が弱く、冷えやすく、睡眠時間を多く必要とするタイプだそうです。
ところが、私はビールが好きで毎晩秋でも冬でもグビグビ飲んでいました。
睡眠時間は大体5時間くらい。

そこでビールを減らし、食事も季節(当時は秋でした)にあったものを(外食でしたが)選び、睡眠時間を7時間くらいに増やしました。
先生から処方された漢方薬ももちろん効いたとは思うのですが、生活習慣を変えたことが、とても大きいと感じます。

なぜなら再発もせず、また文頭にも記したとおり、当時より今の方が体調がずっと良いからです。
また、それ以上に一日のリズムや季節を感じながら生活できる楽しさを得られたことが大きいです。

私が健康に、楽しく暮らせるようになった、そう変えてくれた考え方が詳しく書かれているのが、この「読体術」というわけです。

それでは順を追って、3つのエッセンスを以下に記していきます。

 

【1.一日のリズムに従って生きる】

東洋医学には、身体や自然界のすべてのものを「陰」と「陽」のふたつの要素に分ける考え方があります。
この「陰陽」(いんよう)の関係は、自然界にある周期的な変化すべてに見られます。

一日のリズムでいえば、朝日がのぼり、「陽」のリズムが強まる。
夕日が沈み、「陽」のリズムが弱まり、変わって「陰」のリズムが強くなっていく。

このリズムに、人の生活リズムも合わせていくと健康に良いというのが、この本に書かれていることです。
日中は少しくたびれるくらい身体を動かし、夜はゆっくり休む。

私はこれを実践してみて、健康になれただけでなく、自然と一体になれる気が強くなってきています。
特に現代は夜でも明るい場所(コンビニなど)や光を発する道具(スマホなど)が身近にあるので、意図的に「陰陽」をつくり、一日のリズムに従っていくことが必要だと感じます。

 

【2.四季を身体で感じる生活を送る】

自然界では、春の訪れとともに冬の間内にこもっていた生命力が徐々に首をもたげ、のびのびと成長をはじめます。
そして夏には成長活動のピークを迎え、秋には実を結び、冬には再び生命力を内にとどめて寒さをしのぎます。

東洋医学では、人の身体も四季のリズムと調和して健康を維持していると考えます。


春は「生」(せい)の季節。
この時期はすべてのものがいきいき、のびのびとします。

こののびのびとした気分を抑えず、身体を少しずつ慣らすように使い始めるのが、春に合った活動の仕方だと、この本では説いています。
「春眠暁を覚えず」といいますが、朝寝坊して陽気をやり過ごすことは避けたいです。

増えてくる陽気を活かすべく、身体が慣れてきたらどんどん活動していきましょう。

 

夏は「長」(ちょう)(=盛んになる意)の季節。
この時期には人の身体も外に向けての動きが盛んになります。
冬の間に貯えていた生命力を入れ替えようとするのです。

ですから、夏には身体をよく動かし、暑さを利用して汗をたくさんかくべきだとこの本では説明しています。

日の出の早い夏は早起きをし、日中は適切にクーラーを使いながらも汗をかきかきバリバリ動く。
早起きした分、最も暑い時間は昼寝をする、あるいは早めに休むことで睡眠時間を確保していきます。

 

秋は「収」(しゅう)の季節。
この時期には、春・夏に外側へ動いていた生命力が、内側へ「収」まってきます。
人の身体も、春・夏に盛んに発散していた生命力を、身体の奥へ収束させます。

服装を工夫して、少なくなってくる「陽気」を逃さないように心がけていくことが大事です。

また、運動の仕方として、春・夏のようにバリバリと動くと自然の流れに逆らい、消耗してしまいます。
今から訓練するというよりは、今まで身につけたものを発揮する時期。
試合や発表会に向いた季節といえます。


冬は「蔵」(ぞう)の季節。
寒さから生命を守るために、生命力を身体の奥に貯蔵しておく季節です。
木々は冬に葉を落とし、生命力の無駄な消費を防ぎます。
人も同じように、陽気の消失を防ぎ、春・夏の消耗を修復、翌年への地固めを行いましょう。

 

冬の厳しい寒さに身をさらすことは避けます。
ただし、暖房などで部屋を暖かくしすぎると、身体の表面が開き、「陽気」が身体から失われてしまいます。
部屋の温度は少し低め。衣服の工夫で身体の熱を逃さないようにしましょう。

 

【3.身体を冷やさない】
東洋医学では、「陽気」を生きる上で非常に大切にしています。
暖かい季節には「陽気」を活発に動かし、寒い季節には「陽気」を内側にしまって無駄遣いをしないようにすることは、前項で解説したとおりです。

「陽気」の最大の敵は「冷やす」こと。
寒い季節に限らず、日頃から身体を冷やさないようにすることが大切だと、仙頭先生は説きます。

まずはその意識を持つこと。
例えば、アスリートがちょっとした休憩中も上着を着て保温をするように。

そして、服装で「陽気」を逃さない。
首、手首、足首の「三首」を覆う。

最後に、食事で内部から身体を冷やさない。
冬にビールをがぶ飲みしたり、アイスやトマトを食べ過ぎるなどは避けます。

 

【まとめ】

私はこの養生法を実践するようになってから、前述したように皮膚疾患が治り、まったく再発せず、さらに健康になれました。

そして、それ以上に大きな成果
「自然とともに生きる安心感を得られたこと。」

がありました。

一日のリズム、四季の移ろい、体温のぬくもりを感じて生活することは、地に足をつけて生きる感覚を私にもたらしてくれています。

そして、「結局は人間も動物であり、自然の一部なんだ。なんでも自分でできるわけでなく、分け合って生き、生かされているんだ。」という謙虚な気持ち、やさしい感じを持つことができます。

 

健康に、ナチュラルな楽しさを感じられる人が増えたなら、ここがもっとやさしさにあふれた住みやすい場所になると思っています。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

次回は
音楽力(日野原重明湯川れい子
を題材に、

「音楽と孤独」
についてみなさんと学びたいと思います。

お楽しみに!