思い込みを排し、「希望にあふれた未来」を創る魔法を手に入れるには ~ミライの授業 / 瀧本 哲史

書籍からやさしさを育む力について考える、架空の書店「あかり書房」です。

 

今回は2016年6月に発売された ミライの授業 / 瀧本哲史 を題材に
思い込みを排し、「希望にあふれた未来」を創る魔法の手に入れ方
について、みなさんとともに学んでいきたいと思います。

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9F%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%81%AE%E6%8E%88%E6%A5%AD-%E7%80%A7%E6%9C%AC-%E5%93%B2%E5%8F%B2/dp/4062200171


この20~30年、日本は低成長にあえいでいます。


国債発行が積み上がり、債務残高(国と地方の長期債務残高)は1100兆円以上、GDPの200%を超えています。


財政破綻が騒がれるギリシャやイタリア以上に大きな負債を抱えています。
歴史的にみても、第二次世界大戦直後の1945年以外の日本以外に、これだけの負債を負っているケースはありません。


暗い状況ばかりお話ししましたが、この先もみなさんは暗い未来を想像したいでしょうか?
そんなはずはないはずです。
私は、「思いやり」という温かさと「厳しさ」という冷静さをバランスよく兼ね備えた、やさしさあふれる未来の社会を想像したいです。

 


京都大学准教授である著者はこの本で、14歳の読者に向け、「希望にあふれた未来を作る魔法」を授けています。
そこから学べる、魔法の具体的な3つのエッセンスは以下のとおりです。

1.思い込みを捨て、事実から考える方法。
2.冒険に必要な地図「仮説」を作る方法。
3.冒険をともにする「仲間」を作る方法。

順々に解説していきますね。

 

【1.思い込みを捨て、事実から考える方法。】

この本で、著者は思い込みによって大失敗した事例と、思い込みから出て事実から考え、大成功した対照的な事例を解説しています。
それは、日清戦争日露戦争で、日本軍を徹底的に苦しめた「脚気(かっけ)」という病気です。
脚気は人口3000万人のこの時代に、毎年100万人が発症、数万人の死者を出す「国民病」でした。

この脚気の対応法として大失敗したのが、陸軍医であった「森鴎外」です。
そして大成功したのが、海軍医だった「高木兼寛(たかきかねひろ)」でした。

 

森鴎外はドイツ医学を学んでいました。
ドイツ医学では、細菌学に詳しいコッホ氏らがおりました。
そのことから森鴎外脚気の原因を「細菌」と決めつけてしまったのです。

そしてそれは、単なる思い込みで因果関係を大きく外したものでした。

 

結果、日本陸軍は悲惨な結末を迎えます。
日清戦争では負傷で亡くなった人が453人、対して、脚気でその5倍以上の2,410人が亡くなりました。

 

対照的に高木兼寛は、イギリス海軍には脚気が存在しないことを知り、食事を米中心のものからパンなどの洋食に変えていきます。


結果、脚気予防に効果がみられました。
実際は脚気の発症原因は「ビタミンB1不足」なのですが、それは当時分かっていませんでした。
ただ、和食から洋食に変えると、脚気予防になることだけは分かっていたので、海軍はそのようにして結果を出したのです。

 


この事例を通し、著者は以下のように伝えています。

~以下引用~

まったくあたらしい課題に取り組むとき、考えても考えても答えが見つからないとき、そんなときには、目の前にある「事実」を拾っていきましょう。
たくさんの事実を積み重ねていった先に、答えは見えてくるはずです。

~以上引用~

これは私達が焦って近視眼的になりそうなとき。
そんなときこそ、冷静になって、事実情報を集めることが大事だということを教えてくれています。

 


【2.冒険に必要な地図「仮説」を作る方法。】

著者は仮説について、2つの大事なルールを教えてくれています。
それは
①仮説は大雑把でいい。
②仮説は空白地帯に立てる。
です。

 

①仮説は大雑把でいい。
この本では、コロンブスを例にしてこのことを教えてくれています。
コロンブスはアメリカ大陸を見つけたわけですが、そのときに使った地図はものすごく大雑把です。
地図というより、「お絵かき」のようなものでした。

しかし、冒険家にとって、地図の正確さはそれほど重要でないといいます。

 

重要なのは、
・おおよその全体像が分かる。
・おおまかな行き先(方向)が分かる。
ことだそうです。

地図とは仮説。
仮説を検証するために、コロンブスは航海をし、見事アメリカ(彼はインドだと思っていましたが)を見つけたわけです。


②仮説は空白地帯に立てる。
これはビル・ゲイツを例に説明してくれています。

ビル・ゲイツが17歳のころ、1972年、大型コンピューターが主流でした。
そして、これからは個人用コンピュータ(パソコン)の時代になる、とビル・ゲイツは仮説を立てていました。

しかも、ゲイツの仮説が優れていたのはここから。
「その時には『ハード』ではなく、『ソフト』が重要になっているはずだ。」

もし、ゲイツがハード、すなわちコンピュータ開発に力を入れていたら、IBMのような大企業と戦わなくてはなりません。
だったら、すべてのパソコンに使われるような「ソフト」を作ればいい。

ゲイツは「ソフト」という空白地帯に旗を立てたのです。

ここでは、私達がどうせ仮説を立てるなら、「空白地帯」すなわち競争の少ないブルーオーシャンに立てる方が良いことを教えてくれます。

 


【3.冒険をともにする「仲間」を作る方法。】

なぜ「仲間」が必要なのか。

このことについて、著者は以下のように書いています。


~以下引用~

どんなに強い勇者でも、ひとりで冒険に出ることはありません。
戦士、魔法使い、僧侶といった個性豊かな仲間たちと「パーティー」を組んで、世界を救う旅にでます。

~以上引用~


そして、このときに必要な作業として、
「自分の個性を知ること」
を挙げています。

我々は全員が「70億分の1の個性」を持ったかけがえのない人間。
その個性を知らなければ、優れた組み合わせを作れないからです。


そして、著者は個性を知り、すぐれたパーティーを作った事例として
「鉄の女」 マーガレット・サッチャー イギリス首相 を支えた男
「デニス氏」
を例にとっています。


デニスはもともと実業家でした。
そして、保守党の支持者でもあった彼は、サッチャーを応援するパーティの席で、彼女と知り合います。
二人は少しずつ惹かれ合い、ついに結婚に至ります。


「男が働き、女が支える」ことが当たり前だった時代、デニスはその逆の役割を引き受けました。
奥さんばかりが注目され、自分はともすれば馬鹿にされる、そんな役回りを引き受けたのです。


デニスに支えられながら、サッチャーは最強のチームを作ります。

 

何人かの専門家を雇い、
・栗色の毛をブロンドに染め上げる。
・炭水化物制限ダイエットにより、9kg減量。
・ボイストレーナーにより、発声法そのものを変える。
などのイメージ演出をしたのです。

これは、
「女性らしいチャーミングさを活かす」シナリオから、
「落ち着いた、威厳に満ちた宰相のイメージを醸し出す」シナリオへの変更を、外部へ印象づけさせるものでした。


サッチャーはこの後1979年にイギリス首相に就任、11年間首相を勤めあげます。
確かに彼女は優れた政治家でしたが、その陰には、それを支え続けたデニスという男の存在があったのです。

 

この話を読んだとき、私は伏見工業高校(当時)ラグビー部の、山口監督のことを思い出しました。

彼は全国大会の決勝の日、15人の先発メンバーにこのようなことを言ったそうです。
「スタンドを見てみろ。あそこにはベンチにも入れない多くの仲間がお前たちを応援してくれている。
その仲間の分まで、思い切り試合を楽しんできなさい!」


このような言葉も使いながら、結びつきの強いチームを監督が作り上げたからこそ、日本一になれたのではないか、と感じます。
まさに
「One For All,All For One.」
ですね。


【まとめ】
1.答えが見つからないときには、目の前の事実を丹念に拾っていこう。
たくさんの事実を集めた先に、答えは見えてくる。

2.大雑把でいいから、仮説を立てて検証しよう。
仮説は空白地帯に立てよう。

3.ひとりでは何もできない。
自分を知り、仲間の個性を大事にして、強いチームを作ろう。


このようなことを大事にして、私はみんなと「希望にあふれた明るい未来」を創っていきたいと考えています。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

 

次回は
日本でいちばん幸せな社員をつくる! 柴田秋雄著
を題材に、

「やさしさを育む方法」
についてみなさんと学びたいと思います。

 

お楽しみに!