日本でいちばん幸せな社員をつくる(柴田 秋雄)に学ぶ日本でいちばん幸せな社員をつくる(柴田 秋雄)に学ぶ「やさしさの育み方」

書籍からやさしさを育む力について考える、架空の書店「あかり書房」です。

 

今回は2016年1月に発売された 日本でいちばん幸せな社員をつくる! ”やさしさ”を大切にしたら、人も組織も生まれ変わった / 柴田秋雄 を題材に、「やさしさの育み方」について、みなさんとともに学んでいきたいと思います。

 

トランプ氏がアメリカ大統領に就任した昨年2017年は「○○ファースト」という言葉が至るところで聞かれました。
簡単に言ってしまえば「自分、家族、自社、自国が良ければ周りがどうあろうと関係ないよ。」ということですね。それが自分に関係する場所の経済を良くすると考えるから、そのような思考、志向になるのでしょう。この「○○ファースト」は、「やさしさ=周りを思いやる、共感する」ことから遠く離れた考え方です。

 

今回ご紹介する書籍「日本でいちばん幸せな社員をつくる!」では、社員やお客様を区別せず、目の前の人を思いやるやさしさを一番大切にすることで、赤字続きのホテルを再建。黒字転換したその過程と考え方が詳しく書かれています。「やさしさ」を軸に、経済的な成功を収めたわけです。なぜ、周りを思いやる、共感するような方法で、自社の経済(業績)が良くなるのか?

 

その成功の原因から考える、やさしさを育むための具体的な3つの手引きは以下のとおりです。
1.やさしさを大事にすると、なぜ経済的にも成功するのかを理解する。 2.今いる所を、楽しい場所にする。 3.正直でいる。
順々に解説していきますね。

 

【1.やさしさを大事にすると、なぜ経済的にも成功するのかを理解する。】
著者の柴田秋雄さんは、2000年にホテルアソシア名古屋ターミナルの総支配人に就任。4期連続の赤字ホテルを、7期連続黒字の優良ホテルへ転換しました。この著書によると、その原動力が「やさしさ」だということです。
ではなぜ人にやさしくすることが、成功の秘訣となったのか?それは、「従業員のモチベーションアップ」にありました。


柴田さんが総支配人になってまずやらなければならなかったこと、それは「リストラというの名の人員整理」でした。しかし、それと並行し、柴田さんは従業員への一流の教育や社員食堂の整備に力と資金を注ぎます。


このシナリオには、当然社内幹部から反対の声があがったそうです。何故辞めさせる社員にまで研修を行うのか?しかも一流の社外研修を?何故赤字続きでリストラしなくちゃいけないのに、社員食堂に資金投入するのか?経費節減しなきゃいけないだろ?というわけです。


ここに、柴田さんの読みがありました。柴田さんの観察では、周りのホテルに負けているのは「知名度」でも「規模」でも「仕事の中身」でもなく、「社員の気持ち」だったからです。赤字続きで、会社の経営がどこに向かっていくのかも分からず、自分たちはただ尻を叩かれるだけ。それでは気持ちが荒んでいくのが当たり前だと思ったからです。


果たして、この研修と社員食堂への資金投入など、「社員にやさしくする」ことで、社員のモチベーションが大きく向上しました。モチベーションが向上することで、スキルも上がる。スキルが上がれば自信もつき、さらにお客様へのサービスが向上する。という好循環を、柴田さんは創り出したのです。


やさしさを大事にすると、なぜ経済的にも成功するのか?それは、社員にやさしくすることで、やる気が満ちるからです。

 


【2.今いる所を、楽しい場所にする。】
次の手引は「今いる所を、楽しい場所にする。」です。
柴田さんが社員のモチベーションを上げるために行ったことは、ホテルを楽しい場所にすることでした。


例えば、それは「感謝の夕べ」という催しです。毎年12月30日に、アルバイトも含めすべての従業員、その家族、取引先など、大勢の人を招いて大パーティをするそうです。

自分たちで最高の料理をつくり、さまざまなイベントを行う。この日だけはホテルを休館にするそうです。そんなことしたら、売上は下がりそうですよね。


しかし、それによって従業員、取引先が心を開きあうようになったそうです。

会社が心を開きあえる場所になれば、お客様にだって心を開けるようになる。そうすると、「形式的な」サービスが、お客様に喜んでもらえるような「やさしい」サービスになる。それを、自発的に従業員が企画、実行することを「楽しむ」組織になるということです。


【3.正直でいる。】
最後の手引が「正直でいる。」ことです。


柴田さんはこの本の中で、「人に嘘をつくのは悪い。自分に嘘をつくのはもっと悪い。」と著しています。
柴田さんは両親、祖父母から、「嘘をつくな」「正直に生きろ」と教えられ、それを守ってきたそうです。誰かを悲しませたり裏切ってまで自分が利益を得るような生き方をせず、愚直に正しいと思うことを貫く。柴田さんは、ホテル経営でもそれを実践していきます。
例えば、ホテルの数字を、アルバイトを含むすべての従業員にフルオープンにしたそうです。そして、利益がこれだけ出たから、ボーナスをこれだけ出すよ!と伝えていった。名古屋で一番のボーナスを出せるようになったときには、わざわざ新聞社まで呼んだ。モチベーションは否応無しに上がりますよね。


この正直な対応が、後々従業員に伝播していきます。そのひとつが、「食中毒事件」。このホテルで食事をされたお客様8人が、食中毒になってしまったそうです。愛知県の決まりでは、10人以上の食中毒が発生した場合、マスコミに公表する義務があるとのこと。柴田さんは公表するとお客様や従業員を落胆させるのではないか、と不安になりました。

そのとき、従業員のひとりが「公表しましょうよ!」と声を上げたそうです。


これにより、食中毒をマスコミに公表。なお、この報道を聞いたお客様があえて予約を入れてきました。「こんなときこそ、あのホテルに食事にいって恩返ししたい。」という気持ちからです。

支配人、従業員、アルバイト、お客様という垣根を超えて、「正直でいること」の大事さが、伝播した瞬間でした。

 

実は私は、この「正直でいること」がやさしさを育むのに、一番厳しく大変な行為だと思っています。柴田さんはこの本で、「誰でもやさしさは発揮できる。」と書かれています。しかし、それは自動的に楽してできることではありません。


興味深い調査結果(2016年 エデルマン・トラストバロメーター)があります。自分が働いている会社に対する信頼度についての調査です。

日本では自分が働いている会社に対する信頼度は40%しかないそうです。ちなみに中国では79%とのこと。


また、同じ調査で経営者に求められる資質として「正直である」についての結果はこうです。日本では28%。ちなみに北米59%、欧州53%です。


日本人は、正直なふりをするのが上手、ということではないでしょうか?

もちろん、相手に合わせてあげる、相手を気遣う「やさしさ」は大切だと思います。


しかし、それによって本来大切な人を、「裸の王様」にしてはいないでしょうか?それが本当のやさしさでしょうか?
私はそうでないと思います。

ではなぜ自分に、あるいは大切な人に対してさえも正直になれないのか?

それは単純で、正直であることが面倒くさく、大変だからです。

確かに会社などの大きな組織では正直であることは難しいと思いますが、せめて私は自分、自分の家族、仲間とのコミュニティの中では、正直でいようと強く感じました。

たとえそれがどれだけ面倒くさくて大変でも。


【まとめ】

1.やさしさを大事にすると、なぜ経済的にも成功するのか。それは、やさしくされた人のモチベーションが限りなくアップするからである。


2.今いるところを楽しい場所にしよう。それにより、そのコミュニティが心開かれた場所になり、人間的な交流が生まれるから。


3.せめて自分には正直でいよう。正直な場所にモチベーションは生まれ、心を開く人が訪れる。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


次回は読体術(仙頭正四郎)を題材に、
「自然と生きる、自然に生きる意味」

についてみなさんと学びたいと思います。


お楽しみに!